日本財団 図書館


 

しかしながら、アルミニウム合金船への押出形材の使用は必ずしも一般的にはなっていないし、特徴も広く認識されるまでには至っていないので、標準化にあたっては、従来アルミニウム合金船に一般的に採用されている構造方法との対比を行ってみることが必要となった。そこで、略々同一寸法の
(1)パイ形材
(2)溶接組立構造
(3)プレリブ構造
のパネル三者による比較実験を行うと共にパイ形材の設計法についての検討を行ったのが今回の性能確認試験である。(2)と(3)とは基本的には同一と考えられるが、(2)は普通造船所で行われている方式であり、(3)はスチフナの溶接を材料メーカーでの自動溶接によったもので、溶接自体の相違を確認するものである。この試験は三種の試験パネルに対して
(1)静水圧試験
(2)FEM計算による妥当性の検証
(3)疲労試験
を実施し、それぞれの特性を掴むことができた。
パイ形材は材料入手可能であった標準案のPI−04について実施、他の2種はこれを基準とした寸法のものとした。
PI−04の板部設計水圧0.31MPaに対して、板の付け根部ひずみ−1800μ中央部2000μとなり、応力はそれぞれ121MPa,134MPaとなり、いずれも降伏点以内にあることが実証され、規格の数値の妥当性が立証された。
今回の性能確認試験の結果を要約すると次のとおりである。
(1)水圧を受ける防撓板の挙動はFEM計算により十分再現可能であることが確認された。
(2)パイ形材のテーパーはスチフナ材付近の面外曲げ(水圧に対抗する荷重)に対して効果があり、これによってパネル中央部の引張応力も緩和され、スチフナ基部と板の中央部の応力の分担を均等化できることが立証された。
(3)パイ形材、溶接組立構造、プレリブ構造の3種類について、同一条件での水圧試験及びFEM解析を行った結果、パイ形材は、幅方向に変化する断面性能を有することと、押出形材であるために溶接による熱影響がないこと、また、溶接ビードがないために応力集中が小さいと云う特徴から、他の2者の試験体に比較して強度的に優れていることが立証された。
以上の結果から今回作成した日本工業規格(案)「船用アルミニウム合金押出形材」の性能数値が実験的にも立証され、規格として健全であることの裏付けが得られた意義は大きい。
FEM計算が実験結果を説用できることが判った意義は大きいが、実際の設計に一々FEM計算を使用することは実用的でないので、別途簡単な実用計算法を確立すると共に、標準寸法の拡張を図り、より実用性並びに応用範囲の拡大化が望まれる。
最後に実験を担当された運輸省船舶技術研究所、材料提供、試験片の製作を担当された各社、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION